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2010年04月30日
シメの追悼
いつもの年なら、ゴールデンウィークに間に合わせるかのように芽吹く木々が、今年はだいぶ遅れている。一見すると冬枯れとさして変わらない淋しい景色に映るが、よ~く目を凝らして欲しい。今回のゴールデンウィークは、春の使者が一同に会した貴重な年なのだ。
まず、今日の軽井沢は白い辛夷の花が満開になりつつある。例年なら、この週にはとっくに散っている北国を象徴する花である。続くように咲き始めたのは、なんと桜!場所によってはカタクリも満開だ。梅も水仙も未だに残っているから、いかに今年の4月は寒さが続いたかがわかる。

我が家から眺める借景も、ご覧の通りで、この時期にしてはちょっぴり淋しげ。だが、下草に春の”若草色”をしっかりと見つけることができる。落葉松も、この2日くらいで急に芽吹いてきたから、ゴールデンウィーク中に一気に春めいてくるだろう。こんなドラマティックな春の変化を目の当たりにできるのだから、長期滞在される方は本当にラッキー!

私が何気なく見ている借景を、ずっと深い眼差しで見つめる一羽の野鳥を見つけた。渡り鳥のシメである。彼女(表情からして、たぶん)はおそらく、昨日の朝に相棒を亡くした鳥なのだ。
昨日の朝、私はけたたましい鳥の鳴き声で目が覚めた。正確には起こされたと言った方がいい。「いったい何事か?」と思い庭を覗き込むと、そこには生きている鳥を嘴にくわえたカラスがいた。鳥はシメであった。その姿・形は見慣れているから、すぐにわかったのだ。しかし、まだ生きている鳥をカラスが捕まえるなんてことがあるのか?と見ている方は怖くてたまらない。だが、だんだんと状況を理解することができた。奇妙な鳴き声で目覚める少し前に、屋根に近い窓に鳥がぶつかった音がしていたのだ。中くらいの鳥である。おそらく、それはシメであり、脳震盪を起こして暫くデッキで動かずに静かにしていたのだと思う。それをカラスが見つける。死んでいると思ったら生きている。カラスもビックリだが、シメはもっと驚く。このままでは食べられてしまうのだから...。道路で、わめき続けるシメにカラスが四苦八苦している。すると、突然カラスがシメを離したではないか!なんなんだ、この展開は。諦めてくれたの?「シメよ、良かったね!」と声をかけようとした次の瞬間、早足で現れたのは通いネコのトラオだった。そうか、そうだったのか...カラスは近くに猫が来たことに気づいて危険を感じ、鳥を手放したのだった。猫はすかさず鳥をくわえて、その場を去って行った。
自然界は弱肉強食であることを見せつけられた朝だった。そして、一夜が明けると、昨日の事故現場に一羽のシメが来ているではないか。周囲をキョロキョロと見回して、じっと何かを待っているような様子だ。シジュウカラやイカルのように声をかければ良いのにと思うが、それもしない。呼んでも返事はないことを予め知っているような姿。この時期、庭を訪れる鳥たちは、みんな仲の良い”つがい”である。巣作りに忙しい、幸せな鳥ばかりがシメの前を行き交う。渡り鳥のシメは、そろそろシベリアへ帰る頃だ。こんな大事な時期に相棒が消えてしまうなんて、予想だにしていなかったはず。彼女は、午前中いっぱい山桑の枝に止まって、誰かの帰りを待ち続けた。
一見のどかに見える鳥たちだが、そんなことはなかった。水浴びをする時、なぜあれほど周囲を見回して安全を確認するのか?と思っていたが、自然界とはいつも危険が隣り合わせの暮らし。咲き始めた桜を、今朝はせつない気持ちで眺めた。
posted:2010年04月30日 11:58



