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2010年04月03日
小淵沢 祝いのテーブル
週末は小淵沢へ。春の気配を感じるにはまだ遠いと思っていたが、車を走らせていると、あちらこちらでネコヤナギの黄色い花が開いていた。軽井沢では銀色の蕾が目立ちはじめたばかりなのに、八ヶ岳周辺は傾斜地が多く、日当たりに恵まれていることがわかる。
リゾーナーレ小淵沢の設計は、イタリア人建築家のマリオ・ベリーニ氏による。イタリアの街によくある石畳に、石でできた建物は贅沢な作り。外壁に絡まる蔦は、1992年の竣工当時からあるものなのだろうか。それとも、デザイナーの意思とは関係なく自然と生えてきたもの?いずれにしても、私がここを訪れる時にまず一番に目に飛び込むのが、この”蔦”である。冬の間は今日のような感じで、すべての葉を落として寒さにじっと我慢する旅人のよう。春になれば緑の葉をこれでもかと広げ、実りの秋は葉を赤紫に染め上げる。まるで人生の節々を垣間見せてくれるような存在なのだ。このようなものを、きっと経年優化と言うのだろう。

ユニットバスしかなかったリゾナーレに、宿泊者だけが利用できるお風呂ができたのは何年前だったか。チェック・インをして、私は今回初めて”もくもく湯”なるお風呂へ出掛けてみることにした。客室から、その湯のある場所までナビゲートするのはカラフルな板塀だ。

色を追っていくと、同じデザインをした円形の建物が現れる。こちらは風雨にさらされて色も大分くすんでいるが、なんだが楽しそう!

扉を開けてみると、円が連続する空間に脱衣コーナー、洗い場、内湯がコンパクトに設けられていた。残念ながら温泉ではないので、無色透明の内湯はさながらスポーツクラブの塩素風呂といったところ。対して外湯は、なかなかユニークだ。専用のタオルを体に巻けば混浴ができ、小さいながらも空が仰げる。松の大木に囲まれて、自然と湧き出る湯に集まる野生動物になった気がした。昼間だと狭さが際立ってしまうので、暗い夜がおすすめ。
夕食は、ホテル内にあるレストラン OTTO SETTEで。今日は、旦那さんの両親と兄弟、その子供たちが遠方から駆けつけたお祝いのテーブルだ。どんな祝いか?というと、これがユニーク。今年、”年男である父”を祝うのだ。しかし、両親に詳しく聞いてみれば、年男だからと言って12年ごとにいつも祝っているわけではないらしい。72歳という年齢が、昔の感覚でいうと”往生”にあたるかららしいのだ。言われてみると、その通りだと思った。日本人は一般的に長寿と言われるが、60歳を前にして他界していった友人、知人、親戚は多い。母は、共に人生を歩んできた夫に感謝を込めて、祝いの場を設けたのだった。
イタリア語でOTTOは8、 SETTEは7を表す。これにかけて、”八ヶ岳の、7人の達人”によるレストランが生まれた。ここで言う達人とは、食材を生み続ける生産者たちのことである。リゾナーレといえば、イタリアンレストランのラ・ヴィータで有名だったが、それがより地域性を高めて現代風にリニューアルされた感じだ。長さ10メートル以上に及ぶワインセラーはスタイリッシュな雰囲気を醸すだけでなく、ラインナップも充実していて、ワインリストを眺めるのも楽しい。乾杯は、日本が誇る葡萄”甲州”を本格的なシャンパン方式で辛口に作り上げた塩山市 機山洋酒のキザン・スパークリング。

ご参考までに、今宵のMenu (写真のないものもあり)
Antipasto
信州のアルプスサーモンと岩魚を使った前菜 いろいろな野菜のサラダ仕立てで

Antipasto caldo
フォアグラのソテー 田舎白州米を使ったリゾット添え 勝沼町産ワインビネガーのソース
Primo piatto (私のチョイスしたもの)
長野県産石臼挽き小麦”華梓”を使ったタリアテッレ はまぐりとアスパラガスのソースと共に

Second piatto (私のチョイス)
千野さんの育てた甲州信玄豚ロース肉の炭火焼き 粒マスタードのピュレ添え

Primo dolce
山梨県産甲州葡萄のエスプーマと甘夏のグラニテ
Dolce (私のチョイス)
”ティラミス”コーヒーの風味を効かせた軽い泡を添えて

まず野菜の新鮮さと味の濃さに驚かされ、地元の食材に舌鼓。全体的に、ラ・ヴィータ時代とは異なるヘルシーなイタリアンになっていて、最後まで本当に美味しかった!ただ、デザートにティラミスをチョイスしたのは、イタリアのあの濃厚な、エスプレッソでやっと口の中がさっぱりするような味を、密かに期待していたから。こちらも従来のティラミスではなかった。エルブジのエスプーマの波、こんなところまで。
リゾナーレ小淵沢も18年の歳月を経て、少しずつ変化を進化をしてきた。3階建ての宿泊施設 レジデンス棟の一階は竣工当時よりイタリアの街らしく、様々なマルシェに生まれ変わったし、クライン・ダイサムによるドーム状のチャペル ZONAも誕生。メインダイニングとイタリアンレストランもリニューアルした。そして、自然の中に日本らしく?”お風呂”もできた。街も建物も時代と共にあるのが心地よいことを、このリゾートは教えてくれる。
お祝いを迎えた父から全員に手渡されたのは、なんと2019年までの年表!それぞれの年齢や結婚年数が記されていた。父の欄には、”車”の文字が。「あと十年後にも、私は車を運転していたい!」ということらしいが、それよりも何よりも”生涯現役”を実現させる力が漲っていた。前向きに生きるとは、こういうことなのですね。
posted:2010年04月03日 20:29



